インターネット上で情報を検索すると、同じテーマであるにもかかわらず異なる数値が提示されている状況に直面することがあります。例えば、中小企業のAI導入率について調べた際、12%と20.4%という2つの異なる数値が見つかることがあります。これらの数値のどちらかが誤っていると判断するのは早計です。数値の乖離は、それぞれの調査における「導入」の定義や「調べ方」の違いによって生じるためです。情報を発信するメディアや企業は、数値を安易に引用するのではなく、元の資料にあたってその背景を正確に把握する必要があります。本記事では、実際の調査データを比較しながら、数値を取り扱う際に確認すべき点について解説します。
この記事を3行で解説
- 中小企業のAI導入率として提示される12%と20.4%の数値は、どちらも2026年の調査に基づくものであり、どちらかが誤りというわけではありません。
- 数値の違いは、調査対象や調査方法、そして「導入」という言葉が指す定義の範囲がそれぞれ異なっているために発生します。
- 記事に数値を記載する際は、解説記事などの二次情報に頼るのではなく、元の資料を確認して調査名、公表時期、対象、定義を併記することが求められます。
同じ「中小企業のAI導入率」で12%と20.4%の乖離が発生する理由
同じ「中小企業のAI導入率」という言葉を使っていても、調査によって12%と20.4%という異なる数値が示されることがあります。これは、どちらかの調査が間違っているわけではありません。それぞれの調査が設定している「導入」の定義と、データを集めるための「調べ方」が異なっているため、結果として出てくる数値に違いが生じても不思議ではありません。
中小機構の調査(20.4%)の定義と調査方法
20.4%という数値は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が2026年3月に公表した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」によるものです。この調査は、2025年11月17日から12月12日までの期間に実施されました。調査方法はWebアンケートであり、全国の中小企業10,000社を対象として行われ、導入状況の設問に対する回答数は1,647社でした。
この調査における導入率20.4%という数値は、「全社的に導入している」と回答した割合と、「一部の業務で導入している」と回答した割合の合計値となっています。つまり、業務の一部であってもAIを利用していれば導入しているとみなす、比較的広い範囲を対象とした定義が採用されています。
株式会社Leachの調査(12%)の定義と調査方法
一方で、12%という数値は、株式会社Leachが2026年5月18日に発表した「中小企業AI導入実態調査2026」によるものです。この調査の対象は従業員300名以下の中小企業であり、調査期間は2025年4月から2026年3月までとなっています。調査方法は、同社の支援先企業へのヒアリング(n=40超)と、各種公的統計および業界調査の二次分析を組み合わせたものです。
株式会社Leachの調査では、導入の定義を「個人利用ではなく、社内業務プロセスにAIが組み込まれ継続運用されている状態」としています。個人での利用にとどまる場合は導入とはみなさず、業務プロセスへの組み込みと継続的な運用を条件としているため、数える範囲は中小機構の調査より狭くなります。
出典:株式会社Leach「中小企業AI導入実態調査2026」
数字の「定義」と「調べ方」の違いを理解する重要性
このように、同じ「中小企業のAI導入率」という言葉であっても、調査によって数えている範囲や調べ方が大きく異なります。数値を扱う際には、その数値がどのような条件のもとで算出されたのかを正確に理解することが不可欠です。
定義の違いが数値に与える影響
中小機構の調査のように「一部の業務で導入している」という状態まで含めて数える場合と、株式会社Leachの調査のように「業務プロセスに組み込まれ継続運用されている」ことを条件にする場合では、同じ導入率という言葉でも対象となる範囲が異なります。定義の範囲が広ければ数値は高くなり、定義が厳格であれば数値は低くなります。この定義の違いを無視して数値だけを比較することは、情報の正確性を損なう原因となります。
調べ方の違いが数値に与える影響
データの収集方法も数値に影響を与えます。中小機構の調査は1,647社からの回答を得たWebアンケートに基づいています。一方で、株式会社Leachの調査は、自社の支援先企業へのヒアリング(n=40超)と、各種公的統計や業界調査の二次分析を組み合わせたものです。アンケートによる自己申告の集計と、ヒアリングおよび二次分析による推計では、アプローチが異なるため、結果に差異が生じることがあります。
信頼性の高い記事作成のためにMiravitaが実践する情報検証
Miravitaでは、2026年9月に記事の材料として中小企業のAI導入率を調査した際、これら2つの数値が存在することを確認しました。その際、安易にどちらか一方の数値だけを掲載したり、数値を混ぜて使ったりすることはせず、情報の確認を行いました。
二次情報ではなく一次資料(元の資料)を読み込む
情報を発信するにあたり、他者が書いた解説記事などの二次情報をそのまま信用することはしません。Miravitaでは、元の資料(一次資料)を直接確認するようにしています。今回の調査においても、中小機構が公表しているPDFのポイント版(2ページ)だけでなく、全体版(70ページ)の資料までしっかりと目を通し、調査の背景や詳細なデータを検証しました。このような地道な確認作業を行うことで、誤った情報の拡散を防ぎ、信頼性の高いコンテンツを作成しています。Miravitaの具体的な取り組みについては、こちらのコンテンツ制作の進め方をご覧ください。
記事に数値を記載する際の必須ルール
Miravitaでは、記事に数値を記載する際、数値単体を記述するのではなく、以下の情報をセットで記載するようにしています。
- 調査名
- 公表時期
- 調査対象
- その調査における定義
いつ、誰が、どのような対象に対して、どういう定義で調べた数値なのかを明記しなければ、読者に誤解を与えるおそれがあります。正確な情報発信を行うことが、メディアや企業の信頼性を高めることにつながります。これまでの実績については、こちらの制作実績をご確認ください。
よくある質問
Q. 12%と20.4%のどちらの数値を信じるべきですか?
A. どちらかが正しく、どちらかが誤りということではありません。一部の業務での利用も含めた広い意味での導入状況を知りたい場合は中小機構の20.4%という数値が参考になりますし、業務プロセスに組み込まれて継続運用されている実態を知りたい場合は株式会社Leachの12%という数値が参考になります。用途に合わせて、定義を確認した上で使い分ける必要があります。
Q. 記事に数値を引用する際、どのような点に注意すればよいですか?
A. 数値だけを単体で掲載するのではなく、その数値の根拠となった調査名、公表時期、調査対象、そして定義を本文中に明記してください。また、解説記事などの二次情報から孫引きするのではなく、元の資料(一次資料)を直接確認して記載することが重要です。
Q. 調査によって数値が異なる場合、どのように記事に書けばよいですか?
A. 複数の調査で数値が異なる場合は、それぞれの調査における定義や調べ方の違いを併記し、なぜ数値に違いが生じているのかを読者に説明することが適切です。これにより、読者に対して偏りのない、客観的で信頼性の高い情報を提供することができます。情報発信に関するご相談は、こちらのお問い合わせ窓口よりお気軽にご連絡ください。


